私達の体の細胞は水で満たされています。最近になるまで、水は細胞膜を自由に通過すると考えられていましたが、そうではありませんでした。細胞膜にはアクアポリンと言う水が通る孔があるタンパク質があることが分ったのです。1992年にアクアポリンを発見したピータ・アグリ教授はノーベル賞を授賞しました(Preston et. al.,1992)。図左は当研究所の代表社員がピーター・アグリ教授と共同研究で分離した微生物(メタン生成古細菌)のアクアポリンの構造です(Kozono et.al.2003)。4分子が集まって4量体を作っています。一つのアクアポリン分子の真ん中に水が通る孔(矢印、直径3Å)を見ることができます。図中央は、アクアポリンを通る水の姿を模式的に示したものです。水は一分子ずつ行儀良く並んで、一秒間に数百万個が通過します。その速度はナトリウムやカリウムなどを通すイオンチャンネルの10倍から1,000倍位早いのです。アクアポリンは細胞の水代謝の要の膜タンパク質で、図右のように、細胞膜にあって、水の出入りを制御しています。
アクアポリンの水透過性はアフリカツメガエルの卵母細胞を用いて測定します。ホルモン剤を注射して卵母細胞を成熟させたメス(上図右)から卵巣塊を摘出し(上図中)、コラゲナーゼ処理後、卵母細胞を分離します(上図右)。
この卵母細胞にヒトのアクアポリン遺伝子RNAを注射します(下図左)。卵母細胞にはカエルのアクアポリン遺伝子がほとんど発現していないので、ヒトのアクアポリンの測定ができます。検体の水の中にヒトアクアポリンを発現した卵母細胞を入れると、卵母細胞が膨張します(下図右)。ビデオで撮影し、単位時間当たりの体積変化を計算し、水の透過性(μm/秒)を計算します。
カエルの卵巣摘出
卵巣内の卵母細胞
卵母細胞
卵母細胞へ注射
卵母細胞を用いた水透過性の測定